「ことば」と「きこえ」
学校での耳鼻咽喉科に関する話題

2012.01.30更新

以下の文章は、院長が大阪市学校保健会発行の「学校保健タイムス」に記事として執筆したものです。

ひとくちに「ことば」と言っても、いろいろな意味があります。「書き言葉」、「話し言葉」、「ボディーランゲージ」などといったものや「手話」も「ことば」といえるかも知れません。ここでは、「きこえ」つまり聴力との関係で、「話し言葉」について考えてみたいと思います。発音はおおむね5歳ぐらいまでに徐々に発達していくと言われており、この期間に両側の高度難聴のある子どもは、話し言葉がうまく獲得できないことはよく知られていることです。言葉を獲得するためには耳で聞いて、それを模倣して発音することが大変重要です。高度の難聴でなくても、幼少期には本人からの訴えがないために見逃されがちな滲出性中耳炎などに伴う軽度の難聴の場合でも、特に子音が聞き取りにくいため、言葉も誤って発音される場合があります。このような発音の誤りは「構音障害」といわれ、発音のための舌や口腔などに障害が無いものは「機能性構音障害」に分類されます。その多くは「おかあさん」を「おたあさん」、「さんすう」を「たんつう」といったように「カ行」や「サ行」が「タ行」に変わって発音されるような「置換」とよばれるものです。「置換」は就学時までに改善していることが多いのですが、5歳以上で残っている場合は聴力に異常がないか確認する必要があります。


また、構音障害は難聴のある子どもだけでなく、発達障害や知的障害の子どもにも見られます。これらの場合はその発音が書き言葉で表現できないような歪んだ音になっている場合が多いようです。就学時まで残っている構音障害には「機能性」は少なく、発達障害や知的障害によるものがほとんどであるといった報告もあり、言葉に注目することで難聴だけでなく、これら障害の早期発見にも寄与することができると考えられます。今後、学校現場でも児童生徒の言葉の異常にも十分な注意が必要であると思います。



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