食育と味覚
学校での耳鼻咽喉科に関する話題

2012.01.30更新

以下の文章は、院長が大阪市学校保健会発行の「学校保健タイムス」に記事として執筆したものです。

食育に関する施策を推進すること等を目的とした「食育基本法」が平成17年7月15日施行されました。食育とは、国民一人一人が、生涯を通じた健全な食生活の実現、食文化の継承、健康の確保等が図れるよう、自らの食について考える習慣や食に関する様々な知識と食を選択する判断力を楽しく身に付けるための学習等の取組みを指します。

「食育」という言葉は実は大変古くから使われており、明治31年(1898年)石塚左玄は「通俗食物養生法」という本の中で「今日、学童を持つ人は、体育も智育も才育もすべて食育にあると認識すべき」と記述しいます。

古人が指摘しているように、食育の中で小児期が非常に重要な意味を持ちます。0~5歳の幼児期には味覚が徐々に発達し、その基礎が形成されます。その後の学童期は、いろいろな食べ物に触れ、正しい食習慣を身につけていく時期です。

他方、味を正確に感じることのできない日本人が最近増えていると指摘されています。なかでも増加しているのが、亜鉛不足が原因で起こる味覚障害です。舌にある味を感じるセンサーの役割を果たす「味蕾(みらい)」には亜鉛が多く含まれ、これが不足すると味覚障害を起こします。食品添加物の中には、品質改良剤としてのリン酸塩や、弾力剤のポリリン酸、変色・酸化防止剤のフィチン酸など、亜鉛の吸収を妨げるものがたくさんあるので、インスタント食品やファストフードに偏った食生活は亜鉛不足を招き、味覚障害を起こします。牡蠣(カキ)、 牛もも肉、レバー、ウナギ、ホタテ貝、ナッツ類、チーズ、そば、納豆、木綿豆腐など亜鉛を多く含む食品を上手に食事に取り入れて亜鉛不足を起こさないように注意しましょう。

小児期にインスタントでない「本物の味」を味わい、「味の記憶」を、経験を通して子どもたちに伝えていくことは、食育という観点からも大変重要です。食育基本法が施行されたこの時をもう一度、食生活を見直す機会にしてはいかがでしょうか。



トピックス一覧ページへ戻る