難聴をもつ児童生徒のために
学校での耳鼻咽喉科に関する話題

2012.01.30更新

以下の文章は、院長が大阪市学校保健会発行の「学校保健タイムス」に記事として執筆したものです。

近年、補聴器の性能が向上し、また、人工内耳の埋め込み手術が幼少時に行われるようになり、新生児スクリーニングによる難聴児の早期発見の普及と相まって、通常学級等に通学する難聴の児童生徒が増加してきています。少し古い(2002年)データですが、近畿では公立小中学校での補聴器装用児童生徒の在籍率は15%前後になっており、逆に補聴器装用児童生徒の60%以上が通常学校に在籍しています。また、人工内耳装用児童生徒の70%が通常学級に在籍しているというデータもあります。


高度の難聴で補聴器を利用している場合、はずすと耳のそばで大声を出さないと聞き取れないだけでなく、補聴器を通して聴く音は歪んでいたり、周囲の雑音まで増幅したりするために、聞き取りにくくなります。人工内耳を装用している場合は、外すと全く聞こえないうえに、人工内耳が内耳を電気刺激して伝えられる音の情報は、通常の聞こえと比べるとずっと少ないものですので、聞いている音は通常の言葉とはだいぶ違ったものになっています。雑音があるとさらに聞き取りは悪くなります。不十分な聞こえを補うために、このような子どもたちは、話をしている人の口元や、表情、身振りなどを見て、言葉の理解の助けにしています。

補聴器や人工内耳を装用している子どもたちは、他の子どもたちと同じように教育を受けることができますが、このように音の聞こえ方や言葉の理解の仕方が異なるため、学校生活においてこの点での配慮が必要です。 たとえば話しかけるときには合図をして注意を引いてから、ゆっくりと文章を短く区切って話しかけるようにすると聞き取りが良くなります。また、口元を見やすくして、身振りや文字など視覚的なものを交えて話すことも重要です。視覚の助けを借りているために、聞きながら書き取りをすることは難しくなります。通常では気にならない、教室でのいすや机からの雑音が補聴器などを通すと大変邪魔になります。不必要な音が出ないような工夫を考えてみてください。難聴は外から見てわかりにくいこともあり、理解されにくい面もありますが、補聴器・人工内耳を装用している子どもたちが楽しい学校生活を送り、十分な学習ができるように理解をお願いします。



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